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地域社会の貢献にかかせないCSRの発想とビジネスマインド

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近年、日本ではCSR(企業の社会的責任)に着目する企業が増えている。また、国際協力の分野でも、より多角的な活動の実現のため、CSRへの関心は高まっている。企業がNGOを支援し、開発途上国の貧困地域の栄養改善に取り組むといった試みも見られるところだ。

一方、CSRを社是と同様掲げているだけ、あるいはCSRレポートを作成すれば済むと考えている経営者がいることも事実だ。それはCSRを本業と結び付けず、一過性の社会貢献やコンプライアンスの問題と捉えているからだろう。

企業のCSRについて調査・研究・提言を行っているNPO経済人コー円卓会議日本委員会(以下CRT)の石田寛氏はこう言う。「まずはファッションとして導入してもいい。しかし、1年もすれば、CSRの本業との密接な関わりが何となくでも理解されてくる。その気付きが重要だ」

CSRによる企業改革は、短期的な利益に傾くリスクを避け、企業を持続的に発展させるためのチャンスになるという。

実際、CSRの発想の有無が企業の死活に関わった多くの事件を、この数年間、目の当たりにしてきた。信用よりも利益を重んじる不誠意な姿勢は、即座に株価に跳ね返る時代。CSRを余技として扱う意識は、モラルの問題だけでなく、ビジネス感覚の鈍さを意味するだろう。

ところで1986年に発足したCRTは、1994年には早くも「企業の行動指針」を採択。7原則からなるこの指針は、企業の責任や経済的・社会的影響の考慮、環境への配慮といった原則を明示しており、その先駆性に驚く。

やがてCRTの<企業の行動指針>を生んだ発想は、「社会は企業に何を望むのか」という声に耳を傾けることを促した。さらにステークホルダーとの関連を重視する意識へと結実、企業の社会的責任を問うCSRという概念へと昇華していった。CRTは初めてCSRを使ってビジネスを考えようとした団体といえるだろう。

CRTが発足して20年以上経った。ビジネスは、ときに地域産業や市場を叩きのめし、地域社会の育んできた価値を混乱させ、環境を破壊さえする。そうしたことを経営者たちが学ぶには十分すぎる時間であった。

石田氏はこう言う。「ある地域に進出してビジネスをすれば、地域社会にダメージを与えることも起こりえる。それだけの責任が企業にはある」

むろんCRTは理念だけを述べてはいない。CSRに基づいた企業を改革するシステム「CSRイノベーション」を開発した。これは利益追求とステークホルダーの求める信用を調和させるための診断手法であり、設問による分析で、どのステークホルダーに強みと弱みがあり、課題が何かを明らかにする。要するに、その企業の特徴と特性を可視化する。

たとえば、CSRイノベーションを実施した日産自動車だ。持続可能な成長とは、長期的な見地に立ち、さまざまなステークホルダーに配慮した経営なくしてありえない。そうした自覚のもと、CSRイノベーションを導入した。経営層には自己診断インタビューを通じ、意識すべき問題を明確化し、また各部門の責任者に対するワークショップを行うことで、地域における企業の役割の変化、期待される企業などの情報を共有化した。これらの作業により重点的に取り組む問題がはっきりしたという。

また、ステークホルダーは世界規模で展開するため、必然的に国際協力の必要性もCSRイノベーションにより明らかとなった。日産では、地域社会の発展に寄与すべく教育や環境をテーマとしたプログラムへの取り組みを目標に掲げている。

今日、グローバルな展開を行う企業であれば、CSRに基づいたビジネスは必須だ。進出しようとする地域文化や住民に与えるストレスを分析、調査し、何が望まれているかを把握するのは、持続的な企業活動の展開で欠かせない視点だ。

というのは、現在の世界人口は約66億人だが、グローバルな企業であっても、2割にあたる12、3億人を対象とした市場に製品やサービスを提供しているに過ぎず、おおむね途上国は埒外にある。小さなパイを今後もめぐってのビジネスでは、経済成長の持続可能性は担保できない。  かといって、途上国に対するアプローチが、政府間で合意されたODAの供与を行うという「ひもつき」援助である限り、地域にビジネスの芽も市場も生まれない。

また、国際開発、協力も本当に現地の技術で生産可能なものでない限り、持続性のないプランの押しつけになるだろう。

そこでいま注目されているのが、BOP(ボトム・オブ・ザ・ピラミッド)だ。世界には、1日2ドル未満で生活する貧困層が40億人いる。BOPの発想は、所得ピラミッドの最下層に位置する人を保護や援助対象ではなく、ビジネスの対象とする。

貧困層を消費者に変えるには、先進国向けの製品やサービスをたんに簡略化するだけでは不十分で、ビジネスモデルそのものの抜本的改革が必要だ。

日本企業の例でいえば、住友化学のオリセットネットがあげられる。アフリカでは、マラリアで死ぬ子供たちが多数いる。そこで防虫剤を練り込んだオリセットネットを開発、現地工場に技術を無料で提供し、雇用創出にもつながった。

「こうした開発、支援であれば、BOPビジネスになりえる。NPOもCSRの切り口で、企業にどうプレゼンできるかを考えることも大切だ」と石田氏はいう。

現在、CRTの日本委員会は、世界銀行東京事務所とBOPプロジェクトを進めているという。世界銀行は、BOPをCSRとして行う価値の重要性を訴えている。つまり、企業が貧困層を市場化するのではなく、互いが利益と恩恵を得られる依存関係になるよう促している。

CSRはビジネスのみならず、国際開発、協力においても有効と言える。従来、NGOは企業と対立する関係で捉えられがちであった。

だが、いまやBOPを行おうとする企業は、NGOの持つ地域社会の人脈と信頼を欲しているはずだ。そういう意味では、CSRの観点は、NPOで働く人にとっても企業との連帯の可能性を探り、新たな活動分野を可視化するツールとなりえると言えそうだ。
JPN
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尹 雄大
ライター。1970年、神戸生まれ。「AERA」や「Number」などで執筆。〈考える高校生のためのサイト mammotv〉でインタビュアーを務める。著書に『FLOW 韓氏意拳の哲学』(冬弓舎)