JICAとソニーのガーナHIV/エイズ教育プログラムにおける官民連携

      【7月17日】独立行政法人国際協力機構(JICA)とソニー株式会社のガーナ共和国で行った共同プロジェクトについてのプレスセミナーが開かれた。今回JICAとソニーが共同で行ったHIV/エイズ啓発教育プロジェクトは、以前デベックスがJICAの官民連携室にインタビューを行った際取り上げられたPPP (Private-Public Partnership)のトレンドへ具体的に乗り出した例としてあげられる。(過去の関連記事)以下に、プレスセミナーの内容をまとめてみた。

      JICAJICAはODAを実施する援助機関として、大学、地方自治体、NGO、国際機関、他国の援助機関などとの連携があるが、今新JICAが特に開拓を迫られているのは官民連携(PPP)である。官民連携室を設置し、民間との連携を活性化して途上国援助の効果を高めようとしている背景には3つの流れがある。ひとつは、全体の途上国に流れる資金で、以前はODAが7~8割、民間活動が2~3割を占めていた。これが、現在逆転し、ODAは約2~3割、民間が約7~8割を占めている。ふたつめには、今年6月2日に開かれた総理が議長となりODAのあり方を日本政府として議論する会議で、「ODAは民間企業のCSR、そして貧困層向けビジネス(BOP)との連携をいっそう推進していく」との意見があった。このような考えが最高意思決定の場ではっきりと示されたことは、この連携の可能性と期待の大きさが伝わる重要な場面となった。そして最後に、この官民連携は援助機関と民間の連携を通じて援助の効果をもっと強めていこうというトレンドとして、政府、開発援助国、ビジネスに、win-win-winの形をもたらすとの期待が寄せられていることにある。JICAにとっての民間企業との連携は以下の3つの分野で行われる。

      1. 途上国が整備すべきビジネス環境の整備をJICAが支援すること

      2. 民間企業を使ってインフラ、公共サービスを改善していく取り組み

      3. 企業の社会貢献活動、途上国貧困層を対象とするビジネスとの連携

      今回の共同プロジェクトは、JICAにとって3番目の分野でソニーと連携した結果となり、得た成果からこのような連携を一層強くしていきたい、とJICA(肩書き)の高野氏は発言した。ソニー他方で、設立当初が社会貢献の理念が設立目的としてあったソニーは、現在国際的な事業を展開している企業として、ソニーがもっている技術、パートナーシップ、社員の参加を通じて、自足可能な社会づくりのための数々のCSR活動に参加している。途上国でのビジネス展開(BOP)は、ソニー商品は比較的プライスレンジが高いため、まだチャレンジが残るが、社内部の勉強会などを通じて社員らが検討中だという。    主にアフリカなどの途上国に対してミレニアム開発目標などの国際基準に基づき、途上国社会貢献を行ってきたいくつかの例としては、UNHCR難民キャンプに映像機材提供、南アフリカ図書館者プロジェクト、UNICEF「EYE SEE」プロジェクトなどがある。今回の共同プロジェクトを開催するにあたって、来年開催されるワールドカップのオフィシャルFIFA パートナーとなったソニーの背景にはアフリカから6カ国が出場する今大会中、TV普及率が低くその国の代表の試合を見て応援することができない貧困層にいるひとりでも多くの人にサッカーの映像を通して夢と感動を伝えたいという思いがある。そして今回はガーナの人々の熱気が沸くサッカー試合を大型スクリーンで放映することで、多くの人々を集客しHIV/エイズの啓発・教育イベントをJICAと開催しようという試みであった。開催したイベントでは、FIFAからの特別許可を得て、コンフェデレーョンカップ2009年の生中継映像、また2006年FIFAワールドカップのガーナ戦・録画映像を無料放映した。ハーフタイムにHIV/エイズ啓発ビデオを流し、同じ場所にコンドーム配布とHIV検査ブースを設けた。HIV/エイズ問題とプロジェクト概要HIV/エイズ蔓延防止は2000年に設定されたミレニアム開発目標の8つの中の6番目であり、2015年までに蔓延を食い止め、その後減少させるために世界的な取り組みを行うという国際社会の達成目標がある。ガーナが位置するサブサハラ・アフリカではHIV/エイズ感染率が集中しており、全世界のHIV陽性者の69%、新規HIV感染者の70%、エイズによる死亡者の75%(2007年)を占めている。 100人に5人がHIV陽性という現状を持つサブサハラ・アフリカでは毎日4,109人がエイズで亡くなっている。これに応じてJICAはHIV/エイズ対策プロジェクトとして、アフリカ10カ国 で7つの主なプロジェクトを実施し、合計45人のHIV/エイズ対策関連の青年海外協力隊員を派遣している。ガーナ共和国のHIV感染率は、全国平均2.2%で 、中でも一番深刻な問題は、15から24歳の若者の人口の感染率が1.9%(2003年)から2.6%(2007年)に増えているということだ。「若者の新規感染防止」を最重要課題としてJICAは2005年から、マスメディアを通じたエイズ教育プロジェクト(HAPEプロジェクト)を実施してきた。プロジェクトの特徴は、若者の感情に訴えかける啓発・教育活動(ラジオ放送、演劇上映会、ビデオ上映会)である。そして、集客力アップのためにサッカー大会を導入し、サッカー大会の前に演劇をし、ハーフタイムにクイズを入れていた。もうひとつの特徴として、コミュニティ巡回式VCT(自発的カウンセリングとHIV検査)を同じ場所に設置する。このプロジェクトはJICAが直接実施しているのではなく、現地NGO・ガーナ家族計画協会(PPAG)と役所内の関係各局が連携して、JICA、専門家、ガーナエイズ委員会の調整の元に実施していた。この若者を対象に実施されていたJICAプロジェクトにソニーが賛同することで、 今回集客を増やすという期待があった。2009年6月24日~7月3日の実施期間の間、ガーナ共和国内で 最も感染率が高いイースタン州とアシャンティ州内の計7都市でイベントを開催。200インチ、高画質の大型スクリーンを使用し、日中に行われたサッカー大会の後に試合を放映した。成果として、全体の参加者は予想を約2.5倍上回る8,867人にのぼり、HIV検査受診者数も約3倍の1,094人の集客に成功した。また、州大臣も2箇所でのイベントに参加し、政府の共感も得ることができた。ソニー側の要望によりテレビ、電気にアクセスがしにくい地方でのイベント(7箇所のうち5箇所)が多かったのにも関わらず、JICAの不安をよそに大きな参加数を得ることができた。今回の共同プロジェクトにおいて、JICAはすでにある体制に賛同してもらう形だったため、負担したエキストラ・コストは少なく、機材の輸送費を出したのみ。ソニーは、輸送した映像機材を寄贈し、これからの機材の使用を考えるとコストの軽減にもつながる。今回のソニー機材は、現地での野口秀雄記念館の映画上映や、日本映画上映、また来年のワールドカップ試合上映などにも使われる予定などがある。まとめこれからの方向性として、両者はこういった協力の下、さまざまな問題に取り組んで生きたい姿勢を示した。MDGにおけるいろんな分野で、官民連携をいろいろな大陸で展開していく可能性はとても高い。その中で、連携先選びやプロジェクトを構成していくにあたってどのようにパートナーシップのメリットを最大限に引き出せるのか?ここは、今後の官民連携の重要なポイントではないだろうか。例えば、今回の連携において、ソニーにとって他の国際機関ではなくJICAとのパートナーシップがもたらすメリットとして、積極的な民間連携の入り口がJICAにあったこと、JICAがすでに現地での体制と信頼関係を築いていたこと、短期間で実施したプロジェクトに必要なコミュニケーション、距離感、サッカーに対して熱意がそろっていたことなどがあげられた。同じくJICAにとっては、ソニーの機材提供でHIV/エイズ啓発・教育活動の質向上につながったこと、FIFAオフィシャルパートナーならではのコンフェデレーション試合の放映許可などの成果でJICAの予想を上回る大きなイベント参加数を得ることができた。このように、すでに完備されているお互いの強みと、 両者の目標が開放的なコミュニケーションを通してうまく重なりあうパートナーシップ体制がさらに浸透して行けば、官民連携が効率的、効果的な途上国援助またCSRを実現していくケースは今後増えていくと思われる。 

      詳細はソニージャパン・プレスリリース: http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200907/09-0717/

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