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エコトワザ(eco+waza)は、環境にやさしい技術や環境保全の理念をもつ日本企業にスポットライトを当てて外国へ日本発の環境技術、商品を紹介する日英2ヶ国語による初めての雑誌ではないだろうか。この雑誌の裏では、エネルギッシュな創業者が、日本のやや島国的なビジネス文化を払しょくして、日本企業と途上国を含めた外国企業との橋渡しを行おうとしている。
エコトワザという名前は、英語の「エコロジカル(ecological)」からとった頭文字ecoと、日本語で技術や技能、匠の精神を意味する技(waza)の文字に由来している。これらの言葉は、この雑誌を発行する株式会社エコトワザの理念を表している。それは「日本の環境にやさしい技術と世界を結ぶ架け橋となる」というものである。
この雑誌は、日本の、主に中小企業の様々な環境に配慮した製品を紹介している。その「エコ製品」の一例としては、竹製の食器セット、食器を洗うのに洗剤が不要なキッチン用スポンジ、日本の伝統的な模様に加工されたリサイクル牛乳パック製の壁紙などがある。エコトワザはまた、伝統的な日本の価値観や技術に関する情報を、2ヶ国語で紹介している。
一方株式会社エコトワザは、雑誌で紹介された会社や製品が、海外市場開拓や海外市場進出準備のサポートなど海外進出のパートナーとしての活動を行っている。加えて、同社はエコトワザウェブというオンラインのE-コマース用サイトを運営している。このサイトで、消費者は直接、環境配慮型の製品を購入することが出来る。
「各商品は単に環境にやさしいだけではなく、特徴としてプラスアルファとなるようなユニークな価値を持っているのです。」と同社の代表取締役で、この雑誌の編集長である大塚玲奈氏は述べた。「私どもは常にその製品の裏側にある理念や文化、歴史などについて説明を加えています。」
さらにこのウェブサイトと雑誌では、海外の小売業者や、その製品を使用したいと望む企業とのパートナーシップの締結に関心を持つ日本の製造メーカーに対して、連絡先等の情報を提供している。多くの製造メーカーには英語がしゃべれる社員がいないため、エコトワザ社はこれらの企業に対して、文化や言語の壁を乗り越えるための国内の窓口となっている。
一方、日本のエコ製品を探している外国企業に対しては、エコトワザ社は調査と商品選択のための情報を提供している。エコトワザ社の目標は、外国企業と日本の企業が相互に、簡単にメールや電話で連絡を取りあえるようにすることだ。
エコトワザ社は現在、設立3年目で、安定したペースで拡大している。しかしながら、同社にとって、又はその熱意に富んだ社長兼編集長にとって、全てが順風満帆であったわけではないようだ。
アイディアを実行するということ
大塚氏がエコトワザ社のアイディアを考え付いたのは、人生の大半を過ごした米国から日本へと戻ってきたときのことである。彼女は帰国後喘息に悩まされ続けていたが、それは東京の大気汚染のせいなのでは、と考えた。そのとき、彼女は現代社会において環境問題が、純粋な経済的効率を優先した意思決定により見過ごされてきたことを実感した。大塚氏はそれを変えていこうと決断した。
国際的なビジネスの経験を得るために、大塚氏は一旦米国に戻った。2001年9月11日、米国で同時多発テロ事件が発生した際に彼女はカリフォルニア大学バークレー校でビジネスを学んでいたが、その時期の混乱が彼女の人生に大きな影響を与えた、と彼女は語っている。
「争いが起きたわけではなかったのですが、事件発生当初、皆がかなり感情的になっていました。」と彼女は語った。「その頃、住んでいた寮長ーが皆を集めて、非常にすばらしいスピーチを行いました。この寮長が述べたのは、『憎しみを語るのは非常に簡単で、それは連鎖反応をもたらすだろう。しかし、最も大切で、また同時に難しいのは、その連鎖反応を止め、これまでとは違った行動をする最初の人物になることである』ということでした。」
この経験は、その後一橋大学で法学および国際関係学の学位を修了するために日本に戻った際も、大塚氏の心に残った。卒業後、大塚氏はリクルートに就職するが、環境問題に変化をもたらすという希望を持ち続け、起業するための計画を練り始めた。
大塚氏にとって、現代の経済の裏側にある中心的な理念は「所有のための欲求」である。しかし、彼女は「この所有欲が悪さをはたらく」と述べた。彼女のアイディアは、伝統的な日本のスタイルを現代社会に適応させることであった。それによって焦点を「製品」から「よりよいライフスタイルの提供」へと変更するのである。
エコトワザ社は、ある環境にやさしい製品が、大量生産される競合製品よりも高価であったとしても、それらの環境配慮型の製品はより長持ちで、より良いデザインであり、従って、多くの場合寿命が短く、使い捨てである安価な製品よりも、よりよいライフスタイルを提供するという視点により合致すると考えている。大塚氏はライフスタイルを提供する寿命の長い製品が、持続可能な社会にとって不可欠なものであり、またそれが企業にとってはビジネスチャンスになると考えた。
刺激的な構想
国際関係を学んだことは、大塚氏に開発と貿易に関するユニークな視点をもたらしている。彼女は全ての開発と貿易プロジェクトやプログラムにおいて、政府がピラミッドの頂点にあり、そのピラミッドにはグローバル企業やNGO、や市民社会が含まれるが、中小企業や地方企業はほとんど放置されていると考えた。大塚氏は、「地域間の」または「グローカル」と彼女が定義するネットワークを構築することを決意した。
ビジネスのバックグラウンドを持つにも関わらず、彼女は「起業のノウハウも持っておらず、どこから始めればよいかもわからなかった」ことを認めた。しかし、実務的な知識や実践的な経験を欠いていたことは、エコトワザ社の設立を妨げなかった。
当初は具体的なビジネスプランがなかったものの、すぐに投資家からの支援が得られた。
「私どもに投資をした多くの人びとが、ビジネスプランに投資をしたのではなく、私個人、もしくはその会社の理念に投資をしたのだとおっしゃいました。」と大塚氏は述べた。
同社はこれらの投資家からアドバイスや支援を受けてきた。大塚氏は彼らのことを「先輩」または指導者と呼ぶ。
「前職に在職中、エコトワザ社を設立しました。東京中をまわり、中小企業各社に、外国市場進出と現在のビジネス環境に関する課題が何であるかについて尋ね、マーケットリサーチのため奔走しました。」と大塚氏は述べた。「私は、多くの興味深い中小企業を見つけましたが、企業の多くはそれほど上手くいっているわけではありませんでした。しかし、海外の拡大する市場への進出について強力なポテンシャルが存在するにもかかわらず、それらの企業は海外へ出ることを躊躇していました。ですから、環境にやさしい技術や製品を提供する企業に対して、海外市場への架け橋となるためのビジネスを始めることを決めました。」
中小企業の船出
国内の中小企業の製品を、新興市場を含めて国際的に売り込むことを支援するというのは、簡単そうに見えるかもしれない。一方、日本に培われてきた内向きの文化は、特に地方部においては、島国日本を更に孤立に追いやる可能性は否定できないのではないか。。
大塚氏は当初、環境にやさしい製品が海外市場で主要なビジネスチャンスとなる、という彼女の信念に対する多くの反対意見と立ち向かわなければいけなかったと述べる。彼女が話をした多くの中小企業の代表者達は、海外へのビジネス進出に非常に消極的であった。
「誰も海外への進出を望んでいませんでした。」と彼女は思い返しながら笑った。「そして、利益が出ないといって誰も環境配慮型の製品を作ろうとはしませんでした。」
エコトワザ社によれば、日本の中小企業が海外進出に消極的である理由は2つあった。1つ目は外国人が日本や日本製品のよさを理解できないという思い込みである。そして、2つ目は言語の壁である。ほとんどの日本の中小企業は英語のしゃべれる人材がいない。大塚氏は、今の中小企業が持っていない部分を補強するための支援を提供する、持続可能性のあるビジネスに国内外のネットワークを持つ、2言語、多文化の企業の設立を計画したのである。
当初、エコトワザ社は収益を得るための様々なビジネスに挑戦したが、そのうちのいくつかは計画通りには行かなかった。それらのひとつが「レンタカグ」として、家具のレンタルを行ったが、そのレンタルの多くが長期化したために失敗した。
このような立ち上げ初期の厳しい時期に、その事業を継続させることを助けたのが、彼女の好きなビジネスリーダーによる教えであった。本田技研工業株式会社の創業者である本田宗一郎氏はかつて「90%の人々が反対するアイディアであれば、それにかけてみるべきである。」と言った。
エコトワザ社が設立されてから数年後、大塚氏には、中小企業の日本でのビジネスの見通しに関する変化のきざしが見え始めた。そして、彼女のビジネスがゆっくりと軌道に乗り始めた。
「3年前にあった方々と、同じコンセプトに関して話し合うときに得られる感触は、本当に変化していった。」と彼女は述べた。「経済が停滞し始めるにつれて、またビジネスが経済危機からの影響を感じ始めるにつれて、社会は変化していきました。結局は、何事にも時間がかかるということなのだと思います。」
エコ企業家精神
大塚氏によれば、エコトワザ社のような会社にとって、新興市場は大きなビジネスチャンスを持っている。持続的な拡大を望む国々は、環境にやさしいライフスタイルサービスの提供を伴った、開発の目的に到達するための支援を必要としていると彼女は主張した。そして、使い捨てでないパッケージや建築資材、そして環境にやさしい洗剤などの家庭用品など、持続可能なビジネスにおける具体的なビジネスチャンスとなるようなヒントを挙げた。
新興市場の発展の鍵となるのは、地元の知識と素材を使用し、地域の能力を創り上げることであると大塚氏は加えた。
大塚氏は、自身を社会起業家として、もしくはエコトワザを社会企業としてはとらえていない。
「企業の目的は社会に対しての価値を増大させることです。」と大塚氏は述べた。また日本語の「会社」が文字通り「社会の要求を満たす」ということを意味すると指摘した。
エコトワザ社の理念の根本的な要素は、消費はこれから進むべき道ではないということである。
「私達は環境問題を解決する必要があり、そのプロセスの中で、ビジネスの機会を創造する必要があります。」と大塚氏は述べた。「一般的なビジネスと、終わりのない成長のための成長は、環境問題や社会問題の増大につながるだけであり、開発途上国が先進国と同調により多くを「消費」するのを求めると助長するだけです。」
自ら環境もしくは社会的なビジネスを設立することに関心を持つ若い起業家に対する、大塚氏からのアドバイスを求めると、異なるバックグラウンドを持つ人々と出会うこと、開発や成長の限界について考え直すこと、そして最も重要であるのは、「ただ他人に追随するのではなく、自らの理念を選び取ることです。」と彼女は述べた。
エコトワザ社自身も、常に新たなアイディアやパートナーシップを模索している。
(この記事は英文記事の翻訳です。原文はこちら)
JPN