弊社にカウンセリングを受けにくる方々や、国際協力業界を志す社会人や学生の方々と話していて、ほぼ必ず聞かれるのが、「国際開発分野で働くには、修士号を取得するために留学した方が良いでしょうか」ということです。その点について私見を述べたいと思います。結論から言いますと、「修士号はほぼ必須だが、留学は必ずしもそうでは無く、国内の大学院でも十分対応出来る」と思います。まず修士号についてですが、今や国際協力業界で働くためには、外務省など関連する省庁やJICA、JBICのように新卒の学生を定期的に採用する組織は別として、国際機関やNGO、開発に従事する民間企業などにおいては、採用に際して同学位を持っていることがほぼ必須になりつつあります。その点では、国際開発業界におけるキャリアを志す方は、自身の興味や専門性に沿った分野での修士号を取得することを、キャリアのどこかの段階で計画することを強くお勧めします。つぎに留学についてですが、私自身、アメリカに留学し修士号を取得し、現在の仕事につながるスキルや経験、ネットワークを作ることが出来たので、その魅力は肌で感じており、機会と予算、環境が許せば是非とも行かれることをお勧めします。特に英語を中心とした語学の向上や、国際開発分野に従事するプロの方々との幅広いネットワークの構築、また、国際機関や国際NGOの本部やフィールドにおけるインターンやボランティアなど、日本では得にくい機会が豊富にある点がメリットとして挙げられると思います。特に国際機関を志す場合には、そうした組織に働く人々との情報やネットワークを築きやすく、自然にアプローチすることが出来るという環境があります。他方、近年国内においても魅力的な大学院プログラムも幾つか登場しています。そうしたプログラムにおいては、授業を全て英語で実施したり、インターンを推奨しその経験を単位として認定したり、国際開発分野に従事したプロを講師に招いたり、或は海外の大学院への留学をプログラムに組み込む等、留学によって得られるメリットを国内大学院でも得られるようにするための様々な取組みが行われています。そして、国内の大学院に出られた方であっても、国内の援助機関や民間企業のみならず、国際機関や国際NGOに就職することは可能であり、また、実際就職されている方も多々います。むしろ重要なのは、いずれの方策を選択するにせよ、大学院を受験する前に、まずは自分のこれまで学んできたことや仕事を通じて身につけたスキルや経験、感じた問題点などを踏まえて、自身の将来目指すキャリアの方向性や職種を可能な限り具体的にイメージする必要があります。その上で、そうしたキャリアパスを実現するために学びたい或は学ぶべき内容や、インターンをしたい組織及びしたい仕事などを考え、そうした専門性やスキル、経験を身につけることが出来る大学院を選ぶことが重要であると考えています。そうしたプロセスを経て自身の関心やキャリアの方向性を突き詰めずに留学をしても、いろいろな勉強をしていろいろな人に出会い、刺激的な生活を送ることは出来るかもしれませんが、結局終わった時にそれで終わってしまい何も残らなかった(と思ってしまう)方も少なくありません。大学院滞在中或はそれ以前から、自身の卒業後を視野に入れて自分がその時点でなっていたい人材に自分自身を創って行く、そうした意識を持つことが不可欠であると思います。Devex日本支店高橋 宏太郎