政府とNGOとのパートナーシップにおける課題

    国連などの報道によると、アフガニスタン南部のロガール州で8月13日、国際NGOである国際救済委員会(International Rescue Committee, IRC)のスタッフの女性3名及び運転手が、首都カブールに戻る車中において待ち伏せしていたタリバン武装勢力により殺害されました。無くなられた援助関係者の方々のご冥福を心よりお祈り致します。アフガニスタンはタリバンを中心とした武装勢力によるこうした襲撃やテロが頻発しており、治安状況が急速に悪化しています。7月末にも援助物資を輸送していた世界食糧計画(WFP)のトラック49台の車両団が攻撃され、貧困にあえぐ多くの人々のために届けられるはずの食糧が強奪されるという事件がありました。先日たまたまアフガニスタンに駐在していた援助関係者の方にお会いし話しを聞く機会がありましたが、彼の勤務する事務所周辺でも自爆テロなどの爆音が日常的に聞かれ、一部の施設以外に行く以外は外出も禁止されている状況とのことでした。また、これまで政府の要人や軍事関係者を対象とした、或は国際機関が輸送する物資強奪のための襲撃は多々ありましたが、援助関係者、しかもNGOスタッフの殺害を目的とした事件は非常にまれであるということでした。他方、別のニュースとして、カナダの野党議員や一部のメディアが、同国の援助機関であるカナダ国際開発庁(CIDA)がNGOに資金を供与する際の契約において、こうした事件が発生した際の政府の責任を回避する条項を今年の始めから付け加えたことを非難しています(”Government must be liable in aid worker deaths: Opposition” , Canwest News Service)。アフガニスタンで殺害されたスタッフのうち2名がカナダ人であったこともあり、開発プロジェクト実施の際の重要なパートナーであるNGOにリスクを押し付ける方針だとして注目を集めています。アメリカやカナダ、ヨーロッパ諸国などにおいては、NGOは今や各国の政府開発援助(ODA)を実施する主体として非常に重要な役割を果たしています。政府のパートナーとして、政府関連の援助組織では対応しきれない地域や分野をカバーし、また、危険な地域にも奥深く入り込み、現地住民のニーズに即した援助を迅速に提供する役割を果たしています。日本においても、NGOを政府のパートナーとして、ODA推進時における役割を強化すべきとの議論がされることが多くなってきました。そうした議論については異論はありませんが、こうした事件が発生した際の責任問題について、政府がそうした責任を回避する(上のような条項を盛り込んだり、十分な保安対策をNGO側に要求する)という姿勢は、極めて自然のような気がします。日本のODAにおいては、援助を行う国や地域の治安状況や、派遣される組織や個人の保安対策を非常に重視しており、そのため危険な地域に派遣出来ないということはありますが、かといって万が一そうした地域に派遣して今回のような事件があった際のリスクを考えれば、今更その方針を大きく転換することは難しいでしょう。他方、NGOは、政府の方針とは関係無く、それぞれの組織のミッションや専門分野を通じて援助を行い、必要であれば危険な地域での活動も行う組織もあるでしょう。勿論スタッフの保安対策は十分に対策を取っていることと思いますが、潜在的には今回のようなケースが起こりうることが無いとは言い切れないと思います。従って、政府がNGOにプロジェクト実施を委託する際には、やはりそうしたリスクを最小限にするために派遣地域の限定や厳格な保安対策の指導を行い、それがNGO側の活動の自由度を奪ってしまうため、中々パートナーシップが進展しないということがあるかと思います。こうしたリスクが発生した際、特にスタッフが危険地域で殺害されたという究極の自体が発生した際にお互いがそれをどのように受け止め、どのような対応を行うのかということが、日本における双方のパートナーシップの進展を議論する上で1つの重要な論点では無いかと考えます。
    JPN

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