NGOと企業を戦略的に結びつけるコーズ・リレーテッド・マーケティングの可能性

    近年、コーズ・リレーテッド・マーケティングが企業とNGOの双方で何かと話題にのぼっている。不況でビジネスチャンスが見出しにくいなか、社会貢献をビジネスに取り込むことで、企業は収益の増収につなげられる。一方でNGOは、チャレンジングなファンドレイジングや社会への認知度の高まりが期待できる。ケア・インターナショナル ジャパンは、企業とNGO双方にメリットのあるこのコーズ・リレーテッド・マーケティングを最も重要な企業連携の形態のひとつとして位置づけ、取り組んでいる国際NGOだ。同マーケティング部長を務める高木美代子さんに、これまでの事例と今後の発展性についてうかがった。

    コーズ・リレーテッド・マーケティング(以下CRM)とは、製品の売上による利益の一部を、社会貢献活動を行うNGOなどの団体に寄付し、企業の収益増につなげるマーケティング手法だ。日本で近年注目を集めるきっかけとなったのは、ボルヴィックが飲用水の売上の一部をユニセフに寄付した「1L for 10L」が大きい。

    高木さんは、ケア・インターナショナル(以下CARE)のグローバルなCRM実績や企業CSRトレンド分析などをもとに5年程前から企業にCRMを提言してきたひとりだが、「耳を傾ける企業担当者は少なかった」と当時を振り返る。

    だが2008年の金融危機以降、状況は一変した。企業はあらゆるビジネスチャンスの獲得に奔走するようになり、社会的責任の強調によって事業資金の収集に有利に働き、また企業の認知向上にもつながるCRMは企業にとって魅力として映り出した。またNGOにとっても、企業連携は安定した活動資金源の確保、さらには社会的信頼度と認知度の向上につながる。双方にとって利点があった。

    CAREは1945年、第二次世界大戦後の荒廃したヨーロッパの復興支援に向け、アメリカで設立された。日本においても1948年から8年間、約1000万人に対してCAREによる食料品等の支援が行われた。現在は、日本を含む12の加盟国から構成される国際NGOとして、世界70カ国以上の途上国や紛争地域に現地事務所を設置し、活動している。年間800億円規模の支援を手がけるNGOではあるが、ケア・インターナショナル ジャパンの現状について言えば、高木さん曰く「ぎりぎりの人数でまわしている」状態であり、また財政の安定化は課題であり続けているという。

    たとえばユニセフであれば、子どもへの支援を行う団体として社会に広く名が通っており、企業側も社会貢献連携のパートナーとして思いつきやすいだろう。だがCAREの場合、貧困解決に向けて、子どもの支援のみならず農業や教育、衛生など包括的なアプローチを特徴としているだけに、対外的なブランドイメージを確立する際に焦点が絞りにくいことがあった。そこでケア・インターナショナル ジャパンでは、ファンドレイジングの一手段としてCRMを捉え、企業連携を通じた財源確保と社会的な認知向上を試みるなかで、特に「女性やこども」にフォーカスを置いて活動するNGOとして団体のブランドを明確に示すとともに、マーケティング戦略を構築してきた。

    始まりは05年4月、スターバックス コーヒー ジャパンによる企画「イチロープロジェクト」。プリペイドカードの売上の一部をNGOに寄付するという趣旨だった。シアトル本社とCARE USAの連携・信頼関係をきっかけに、両者のグローバルな連携事例が多いなかでの実現。多くのプロジェクトのなかから特に「子ども」に関連する事業(母子保健・栄養改善活動)を特定しての支援となった。その後も、商社の丸紅が扱うトロピカルフルーツブランド「ブラボー」や、美容業界で名を馳せるヤマノビューティーメイトの美容液販売など、いずれも女性やこどもを連想させる商品との連携を主に行ってきた。

    バナナは青果マーケットのなかでは一大商材であるにもかかわらず、一方では差別化しにくい商品だ。安定した顧客の獲得は欠かせないことから、丸紅側は、“家族の健康に気を配っている女性”を購買層ターゲットに想定し、社会貢献という付加価値をつけて独自のマーケティングに踏み込んだ。

    「途上国の女性を支援することが購買層となる多くの女性の心に響くのではないかと声をかけていただいた」と高木さんは振り返る。

    その後、丸紅ならびに小売店との協働で、途上国での活動紹介を含むキャンペーンをスーパー等の売場で行う企画を提案した。

    ヤマノビューティーメイトに対しては、創業者の山野愛子氏の生誕100周年に向けた高級美容液の販売を企画した。美容に関心が高い女性顧客に対する社会貢献的な姿勢の訴求方針に加え、これまで多くの女性顧客から得た支持をぜひ途上国の女性を支援するという形で恩返ししたいという想いが、結果的に女性支援活動への共感を生んだ。

    いくつかのCRM連携の事例を踏まえ、ケア・インターナショナル ジャパンは優良な企業との連携により、互いのブランディング構築への寄与に手ごたえを感じている。特に「特定商品」を介しての連携や「企業ブランド」そのものとの連携といった、コーズ・リレーテッド・ブランディングの発展に期待を寄せているという。これにより、企業とのパートナーシップを偶発的・一時的な関係から長期的・戦略的かつ真の意味で対等な関係へと移行できる可能性があるとみている。

    とりわけ、企業が行った寄付がケア・インターナショナル ジャパンのプロジェクトにもたらした成果と責任を共有することが、「連携継続の鍵になる」と高木さんは指摘する。プロジェクトを実施する現地事務所からの報告を受け、広く一般消費者に対して成果を分かりやすく共有していくことは、寄付を受け取る団体側の責任でもある。

    責任の共有には緊密なコミュニケーションが不可欠だが、いたずらにブームに乗ろうとしてか、「CRMを行うことは決まっているが、社内で考えがまとまっていないまま、とりあえずNGOに話を聞く」という姿勢で打診をしてくる企業も増えているという。さらに協議するたびに企画骨子を変更する企業もあるというから、対価の発生するコンサルティング会社相手では考えられない状況も一方では発生している。

    高木さんはNGOとの連携を検討する企業についてこう忠告する。

    「CRMを含む企業の社会的な取り組みを通じて、5年後、10年後にどういう企業にしたいのか。そうしたコアの部分を明確にした上でNGOとの連携を検討しないと、軸がぶれてしまい、たとえば経済的な不況の影響などを受けて突如、関係継続を断念しなければいけない状況に陥ることもある。結果として信頼やブランドを傷つけることになりかねない」

    一方でNGO側には、団体の透明性や説明責任を果たす企業担当者の設置が求められている。高木さんは、CRMを一時のブームとしてではなく、CSRの観点からも「本業」を通じた戦略的な取り組みとして、また企業・消費者・NGOなど多くのステークホルダーを巻き込む形での効果的なマーケティング手法として受け止めている。

    「団体の存続に収入源の多様化は欠かせない以上、CRMはNGOにとって安定的な収入を得るための重要な企業パートナーシップの形のひとつです。ケア・インターナショナル ジャパンとしては、貧困解決に向けて、女性や子どもに焦点を置いた支援活動を行うNGOという点を戦略的に打ち出し、活動していきたい」

    NGOと企業の双方にとって、CRM成功のためには連携の紐帯に欠かせない自己ブランドの確立と発信力が問われていると言えるだろう。 JPN

    公益財団法人ケア・インターナショナル ジャパン

    http://www.careintjp.org/index.html

    「careギフト」

    http://www.caregift.jp/

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